この記事は、長崎国際大学 人間社会学部 国際観光学科 ×くじらの髭でお届けします。
東彼杵町にある『木場のむすび』では、米と塩にこだわったおむすびを販売している。お米は食味検定で70点以上あるものしか使わず、塩はお米と一番相性の良い平戸の粗塩を使用しているそうだ。大村湾グリーンロード沿いの一見車通りの少なそうな場所に構える当店舗は、どのような経緯で始めたのだろうか。副代表の松尾幸彦さんに話を伺った。
事業を始めたきっかけは、長崎県が取り組む地域活性化事業で、町からの誘いを引き受けた。何を行うかの案出しの際、木場という地域がどんな地域なのか改めてみんなで話し合う中で、「お米がおいしい」と言われていることからお米を売り出そうとなり、おむすびを作り出したそうだ。
地域事業は3年間で終わってしまったが、「このまま終わらせるのはもったいない!」と考えた松尾さんは、メンバーを集めて出資金を募り、軽トラック1台でおむすびを売り出したという。1年半ほど活動したあと、国からの補助金が出たことによって、建物を建て、現在の『木場のむすび』ができたそうだ。
松尾「3年間の事業の時につくったキャッチフレーズが“ふれあい・生きがい・助け合い”。ふれあいっていうのは、地域内と地域外から来る人との交流。生きがいは、地域の見守り。まあ、お年寄りの見守りっていうので、じいちゃんばあちゃんが作った野菜をここで販売すればいくらか収入になるけん、それが生きがいに繋がるっちゃないかな。助け合いは、まさに助け合うこと」
地域事業での経験を通して、そのキャッチフレーズを胸に松尾さんは今も活動を続けている。
木場という地域は長崎県東彼杵町を構成する町域の1つで、南部に位置している。町域内の大部分を田畑が占めており、森林もある。東彼杵町の人口ビジョンによると、平成31年の木場の高齢化率は39.6%で、これは日本全国の高齢化率の平均である28.4%を約10%も上回る数字だ。
しかし、松尾さんはそれを承知の上でこの木場の地に店を構える。その真意とは。
松尾「やっぱり地域内に店がないと、地域外につくってしまうと意味がないし。このお店をつくった理由のひとつが、地域の拠点っていうか、お年寄りの憩える場所があったらいいなって思ったんですよね。まあ、まだまだそこには到達してないばってん。なかなか難しい(笑)」
生まれも、育ちも、木場。
だからこそ、この地域で暮らす町民たちとの交流やふれあいを大切にしたいと想う。
当たり前のことのように思えて、当たり前にはできない行動力だ。木場愛溢れるアツい人、そう感じた。
木場のむすびについて話を伺うなかで、松尾さんが働くうえで大切にしていることが見えてきた気がする。それは松尾さん本人も言っていたことだが、「無理をしない程度にやる」ことだ。木場のむすびで働いている方の中には主婦の方や、他の場所で仕事をしている方もいるそう。それぞれ忙しく、そんなみんなに無理をさせたくない。だから木場のむすびは金土日の3日間しか営業をしていない。時間も10~16時までと長くは開けていない。経営の面から考えると、ずっと開けていた方がロスも減り効率が良いという。しかし松尾さんは経営よりも、働く方に無理をさせないことを大切にしている。
最後に、これから社会にでて働きだす方々へのアドバイスやメッセージをお願いしてみた。
松尾「“お金”という価値観だけで考えないでほしい。お金は手段だと私は思うんですよね。生活するための手段だし、自分の楽しみへの手段だし。だから、お金が目的にならないようにしないと。人間の幸せはお金だけじゃなくて、もっと大事なものがあるんじゃないかな。あとは、自分を大事にしてほしい。地域とのつながりもそうですよね、そこを大事にしていかないと。自分を大事にすることは、相手を大事にすることになるけんね」
“自分を大事にすることは相手を大事にすることになる”という言葉が印象に残った。自分を大事にして相手を大事にすることで、人と人とのつながりをつくっていくのかもしれない。
人と人とのつながりをつくりより強くすること、そのつながりを大事にすることが働くこと、生きることなのかもしれない。木場はこのつながりを地域全体で大事にしている素敵な地域だ。
東彼杵町木場郷1115-1
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土曜・日曜 10:00〜16:00
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